経産婦の無痛分娩レポート。麻酔が間に合わなかった話

無痛分娩で出産してみたいです。実際、どんな感じですか?出産レポを教えてください!

こんな疑問にお答えします。

私は20代で、1人目を総合病院にて自然分娩で、2人目を小規模クリニックにて計画無痛分娩で出産しました。この記事では、経産婦として初めて無痛分娩にトライした時のことをレポートしていきます。両方経験したからこそ語れる、無痛分娩と自然分娩の違いにも言及してみました。

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1. 実はイロイロある。無痛分娩の種類

もう産院を決めちゃったよ、という人はサラッと読み流してください

産院の方針によって、同じ「無痛分娩」でも中身が違うのを知っていますか?

私が産院選びの時に調べただけでも、無痛分娩にはこれだけの種類があることがわかります。

  1. 自然な陣痛を待つ → 痛みが強くなったら麻酔を開始(24時間365日対応)
  2. 自然な陣痛を待つ → 痛みが強くなったら麻酔を開始(平日の日中のみ対応)
  3. 計画入院で陣痛誘発 → 痛みが強くなったら麻酔を開始(平日の日中のみ対応)
  4. 計画入院で、先に麻酔を投与 → 陣痛誘発を開始

無痛分娩ができる産院は増えていますが、殆どの産院は、リストの3です。

例外を挙げると、赤坂の山王病院は24時間無痛分娩が可能です(原則、計画入院です)。芝浦の愛育病院は、オンデマンド無痛分娩(上のリストの2に当たります)が可能です。新橋の慈恵医大病院は、めずらしくリストの4が可能ということでした。※最新の情報はご自身でお問い合わせください。

私の選んだ産院も、リストの3でした。

このように一口に「無痛分娩」と言っても、実際の中身は病院の方針次第です。無痛分娩だと思って油断していたら、夜中に陣痛がきて麻酔ができなかった・・・という話は本当によく聞きます。何が何でも絶対に無痛じゃなきゃイヤ!という人は、産院選びの時によーく調べる必要があるんですね。

経産婦が無痛分娩をするなら、計画出産が無難なチョイス

陣痛促進剤にはリスクがあるので良し悪しですが、経産婦で無痛分娩を希望する場合は基本的に計画出産を勧められます。

私も、計画出産でした。

コロナ禍で夫以外の立ち合いNGだったので、上の子を誰かに預けておく必要があり、計画出産以外は考えられませんでした。

気になる出産日ですが、経産婦は基本的に上の子の在胎週数より早めに日にちを設定します。例えば私は1人目が在胎週数38週6日だったので、2人目の出産予定日は38週2日と決まりました。(院長が麻酔担当なので、院長のスケジュールに合わせたかたちです。)

2. 計画無痛分娩の入院から出産までをレポート

最後の妊婦健診(妊娠36週6日)で出産日が確定

最後の妊婦健診の時点で子宮口が開いているかを確認の上、入院日と出産日を決めます。

私が入院した産院の例

  • 子宮口が開いている場合→出産当日8:30に入院
  • 子宮口が開いていない場合→出産前日15:30に入院(その後、ラミナリア挿入)

この時点で子宮口が1.5cmとかでも開いていれば当日入院だったのですが、私の場合はキッチリ閉まっていたので、前日入院でラミナリア挿入することが確定。出産日は上の子よりも4日早い、38週2日と決まりました。

出産前日の15:30に入院(妊娠38週1日)

自宅から一人で、登録していた陣痛タクシーを呼んでいきました。

タクシー運転手歴半年のドライバーさんが担当だったのですが、これが初めての陣痛コールだそうです!

のんびり駅前ロータリーに駐車していたら、配車モニターに「陣」とでっかく表示されたので、焦ったと言っていました(笑。

しかし実際には陣痛が来ていない私が平然と乗り込んできたので、二度びっくり。登録していたタクシー会社は「通院にも使えます」とアピールしていましたが、本当の陣痛じゃない時は、アプリで配車して行くのが良さそうです。運転手さんびっくりさせたくないので(笑。

受付で名前を告げたら、部屋に案内されました。

荷物を置いて、アメニティの紹介や施設設備の使い方を案内してもらいます。

1人目の時は陣痛でそれどころじゃなかったので、ホテルに泊まりに来たみたいで感動しました(笑。

出産前日の17:00に、分娩室でラミナリア挿入(妊娠38週1日)

お産ショーツに履き替えたら、分娩台の上に乗って、いよいよ誘発処置のスタートです。

リラックスした状態で分娩台の上にいるなんて、不思議な気分でした。助産師さんと雑談しているうちに、院長先生が登場。

サクッと、子宮口にバルーンを入れてもらいます。別に痛くありません。

あっという間に終わりました。待機時間の方が長かったです。

部屋に戻って夕食、就寝(妊娠38週1日)

出産当日は朝ごはん抜きなので、これが妊婦生活最後の食事です。1人目は総合病院だったので、食事が豪華で感動!

事前の案内にはラミナリア挿入後もシャワーOKと書いてありましたが、実際はダメでした。(知っていれば入院前にお風呂入ったのに!)

夕食の片付けもないし、子どもの相手もしなくていいし、暇で暇でやることがなくテレビで「有吉ゼミ」とかダラダラ観ていたのをよく覚えています(笑。今思えば本当に贅沢な時間だったな〜!

バルーンは、特に挿入の違和感はありませんでした。どうしても膣からバルーンの結び目がはみ出しているので歩きづらいですが、トイレも普通にできますし、すぐ慣れます。ゆっくり眠れました。

出産当日の9:15。部屋にて内診(妊娠38週2日)

出産当日は朝食が抜きなので、これが辛かった!

9:15ごろ、外来診察前の院長が部屋に来て内診します。

全く気が付かなかったけれど、どうやら寝ている間にバルーンが外れていたようです。子宮口が開いて、緩んだ口からバルーンが抜け落ちたということなので、外れるのは良いことだそうです。

でも、子宮口はたった1.5cm・・・。

本当に今日産めるの?と不安になりましたが、院長はそれで十分だと言います。

出産当日の10:00。陣痛室へ移動し、陣痛促進剤投与スタート(妊娠38週2日)

10:00 陣痛促進剤投与スタート

検温後、歩きで陣痛室へ移動しました。この時点で痛みは全くなし。この後陣痛が来るなんて全く想像できません。陣痛室はドアの閉まる個室で、パラマウントベッド1台と洗面台があるのみでした。

ベッドに横になり、点滴を装着。お腹にはNSTを取り付けています。

いよいよ促進剤(オキシトシン)投与開始です。

最初はごく僅かな量から、様子見です。

10:30 陣痛促進剤、追加→陣痛スタート

特に変化が起こらないので、促進剤を追加しました。「これは時間がかかりそうだな」などと思い、夫にLINE。

しかし5分後すぐに、規則的な収縮が始まります。

11:00 陣痛のレベルが上がっていく

痛みが強くなっていきます。まだ痛みのピークでも会話ができるくらいです。この時、夫が産院に到着しました。

いつ頃麻酔を入れるか質問したところ、助産師さんは「MAXに痛い陣痛が10だとして、3になったら教えて」と言われました。

1人目の出産を思い出してみれば、今の痛みはまだ「これから5時間はかかりそう」な段階だったので、じゃあもう少し我慢しようか・・・と遠慮しました。

これが、完全に間違いでした。

11:30 陣痛が痛すぎる。痛みのピークは話せないくらいに

死ぬほど痛い。

でも1人目のとき、もっと痛かったよなぁ・・・10段階のうち3かと言われたら、2のような気もするし、3のような気もするし、迷うなぁ・・・わからなん・・・うーん、痛い。うぇぇぇぇ

などと脂汗をかきながら、NSTのメーターが上がったり下がったりするのを夫と黙って見ていました。

11:45 おかしい、私は無痛分娩を希望したはずでは?

我慢大会みたいになってきました。おかしい、私は無痛分娩を希望したはずなのに。なぜ痛みに耐えているのだ。

見かねた助産師さんが、「痛いなら院長を呼びましょうか」と提案してくれ、お言葉に甘えることにしました。(しかし既に時は遅かったのです・・・)

麻酔を打つ予定の院長先生は、外来で忙しくなかなか来ません。

12:00 いよいよ分娩室へ移動。徒歩10m歩く間に、子宮口3cm→7cmへ(妊娠38週2日)

12:00 分娩室に徒歩で移動

陣痛室をでて、向かいの分娩室に歩きました。このわずか10mほどの距離を歩き切った瞬間、のたうちまわるほど陣痛が強くなりました。

分娩台の上に倒れるように乗り、暴れる私。「落ちるからゆっくり乗って!」と助産師さんにはがいじめにされる始末です。

ちょっと歩いただけなのに、なんとこの間に子宮口が3cmから7cmまで突然開いていたのです。

経産婦のお産の進みの早さを見せつけてしまいました。

しかし待てどくらせど院長が来ません。

左腕に血圧計を、指にパルスオキシメーターを装着されました。血圧計が数十秒に1回猛烈な強さで締め付けてくるので、わずかに陣痛から気が紛れます(この後、真っ青なアザになりました)。

陣痛が、死ぬほど痛い・・・おかしい。私、無痛分娩するんじゃなかったの??

12:20 ようやく院長到着。硬膜外麻酔スタート

ようやく、院長がやってきました。

背中に針を刺すので、上裸になるように言われます。上半身ケーブルだらけな上に陣痛がマックス痛いので、なかなか院内着を脱げません。

針を刺す場所をアルコール消毒し、刺していきます。

院長がのんびり「綺麗な背骨ですねぇ」とのたまうので、今そんな話してる場合か!とイライラしてきました。

針を刺したからといって、すぐには麻酔は効きません。

助産師さんは「今、針を刺したからね!もうすぐ楽になるよ、がんばってね!」と優しく声をかけてくれますが、院長は「あー、でも最初は少量ずつ入れて反応チェックするからほとんど効かないと思うよ」などと笑います。助産師さんがすかさず小声で「それは言っちゃダメでしょう」と嗜めましたが、内心「どっちもうるせえ!こっちは死ぬほど痛いんじゃ!!」と、キレていました。

(今思えば、これクレームものですね。全く親身じゃないですよね)

12:40 麻酔が効かないのに、なぜか怒られる

全然効かない。聞いていた無痛分娩と全然違う。

私が痛い痛いと叫ぶので、助産師さんが「無痛とはいうけど、完全に痛みがゼロになるわけじゃないのよ!」と怒りますが、何かがおかしい。「こっちだって痛みゼロを期待しているわけじゃないわ!」と内心キレながら呻きました。「これで麻酔が効いているわけがない。」

麻酔に助けてもらえると思っていたので、希望が絶たれ、気力がゼロに。

酸素マスクがつけられました。

12:45 どうやら麻酔が全く効いていないらしいと、医療スタッフ陣が気がつく

「私が演技でのたうち回っていたとでも・・・?」

院長は「あれ、おかしいなぁ」なんて言いながら、陣痛に悶え苦しむ人のお股に冷たいタオルをペチペチあてて、「どう?これ感じる?」と聞いてきます。「普通に冷たいです!わかります!」と叫ぶと、こりゃ参った、と麻酔を増量することになりました。

遅い・・・遅すぎる。

12:50 痛みが、嘘のようにひく

でも、もう遅い。

なぜなら、すでに子宮口前開なのである・・・・。 

13:00 出産(妊娠38週2日)

うそやん。

麻酔の恩恵に授かれたのは・・・わずか10分でした。

しかし、後から効いてきたこの麻酔が意外といい仕事をします。

これについては後述しますね。

3. 計画無痛分娩の出産費用

ズバリ、無痛分娩のために支払った費用はわずか8万円でした。

内訳は、事前処置が2万円+硬膜外麻酔が6万円です。

私が出産した産院は、小規模クリニックです。後述しますが無痛分娩の取り扱いを開始したばかり(1年未満)ということもあり、都内にしては破格だったと思います。

ちなみに私が1人目を出産した都内一等地の総合病院では、無痛分娩の費用は20万円と案内されました。

これは総合病院がぼったくりというわけでは決してなく、医療体制の差です。つまり私はたった8万円で何事もなく(一応)無痛出産できたけれども、リスクをはらむ選択だったと言えます。正直、初産なら絶対に選ばなかったでしょう。

4. 自然分娩と計画無痛分娩を両方経験した感想・出産の違いなど

計画無痛分娩は余計な体力を使わない→産後の回復が早い

ほとんど麻酔が間に合わなかったとは言え、無痛分娩をしてよかったと思うことが2点あります。

1つ目は主に計画出産のメリットですが、出産前夜にしっかり眠れるのでベストコンディションで出産に望めること。1人目の時は夜10時にわずかに陣痛が始まり、緊張で一睡もできないまま、翌日の昼に出産しています。徹夜明けに出産するのと、8時間寝てから出産するのとではパワーが全く違います。

2つ目は、経産婦の方が強く感じるという後陣痛をほとんど感じずに過ごせたこと。会陰を縫い合わせる際に痛みも、全く感じませんでした。出産直後に分娩台で休む間も、驚くほどリラックスして過ごせました。

分娩時間わずか2時間30分というスピード出産だったことも手伝い、産後の回復はとっても早かったです。1人目の時は出産後8時間、起き上がることができませんでした。1人目も昼に出産したのですが、翌日の昼まで車椅子で過ごしていました。それに比べれば、今回は出産から3時間後にはキビキビ部屋で動き回り、夕食もガッツリ食べられたので回復の差は歴然です。

朝昼抜きだったので夕食が美味しい!写真を撮る余裕まである

ほとんど効きませんでしたが、それでも無痛分娩にしたことを後悔していません。

もしも3人目を産むなら絶対に無痛にするけれど、1人目は自然分娩にしてよかった

もしも3人目を授かったら、絶対にまた無痛分娩を希望します!

けれど1人目だったら、また自然分娩にトライすると思います。単純に人生経験として陣痛に耐えるのはアリかな思いますし、2人目は無痛と決めていたので麻酔のありなしを比較したかったという好奇心もあります。(もちろん無痛分娩が100%リスクゼロになったら話は別ですけれど!意味もなく痛みに耐えたくはない!)

特に初産の時はお産の流れがわからないですから、ちょっとの痛みでも「麻酔追加して!」となり、微弱陣痛になって赤ちゃんに負担がかかる・・・という話はよく聞きますが、容易に想像できます。

とはいえ、私の場合は逆にスピード出産でほとんど麻酔が間に合わなかったので、もしこれで20万円のお支払いだったら泣いちゃうかなぁとも思います。たった8万円だったし、産後の回復がよかったのは事実なので、納得できた感じです。

5. 私と同じ失敗をしないで!無痛分娩を迷っている人へのアドバイス

私は事故もなく無事に出産することができましたが、正直不安なことはありました。もし3人目があるなら、同じ産院は選ばないと思います。反省を踏まえ、分娩施設を選ぶ上で私が大事だなと思うポイントは、次の通りです。

  • 麻酔科専門の医師がいる
    • 私が出産したクリニックでは、院長が外来の合間に無痛出産も取り扱っていました
  • 常勤の医師が3人以上いる体制
    • 私が出産したクリニックでは、常勤の医師は院長含む2人でした。5泊の入院期間中、院長は毎日朝早くから回診に来ました。外来は木曜・日曜以外は毎日担当ですし、お産は24時間体制です。一体いつ眠っているのだろうか?と恐ろしくなりました。
  • 無痛分娩の実績が豊富
    • 私が出産したクリニックでは、わずか8ヶ月前に無痛分娩の取り扱いを始めたばかりでした。具体的な数は怖くて聞けませんでしたが、実績数は相当少ないはずです。(対して芝浦の愛育病院は、2万件以上実績があるとHPで謳っています)

それからもう一つ、有益な情報があります。

無痛分娩に不安を感じている妊婦さんに、ぜひ見てもらいたいウェブサイトがあるんです。

https://www.jalasite.org/のトップページのスクリーンショット(2021年9月9日)

無痛分娩関係学会・団体連絡協議会(JALA)

妊婦さんが正しい無痛分娩の情報を入手できるように作られた、一般向けの情報サイトです。専門家が作ったサイトなので信頼できます。無痛分娩についての一般的な知識のほか、無痛分娩を提供している全国の分娩施設の情報も掲載されています。(ちなみに私が出産したクリニックは、案の定掲載されていませんでした・・・笑)

ぜひ、参考にしてください。

希望するお産スタイルで出産できますように、お祈りしていますね。