妊娠中、気をつけること①”取り返しがつかない”順に身近な感染症・菌を解説

「お腹の子どもを絶対、健康に産みたいです。妊娠中、どんなことに気をつければいいですか?」「妊娠中気をつけるべきことが多すぎて、覚えきれません。うっかりやらかしそうで、不安です。」

こんな不安に答えます。

 本記事の内容

  • 妊娠中気をつけるべき感染症と菌を、胎児 or 妊婦自身 への影響が深刻な順に理解することができる
  • それぞれの注意項目について、なぜ気をつけなければいけないのか理由がわかる

「どれくらい怖がるべき感染症なのか。かかってしまったら、悪い影響が出る可能性はどれくらいなのか。なかったことにする方法はあるのか」を理解して、ストレスフリーな妊娠生活を送りましょう。

今回取り上げるのは、5つの感染症です。

1. 【最重要】風疹

風疹にかかると胎児にどんな影響が出るの?

妊娠初期の女性が感染すると、胎盤を介して胎児がウイルスに感染し、先天性風疹症候群(CRS)の赤ちゃんが生まれる恐れがある。妊娠初期ほどCRSのリスクは高く、妊娠1カ月で50%以上、2カ月で35%、3カ月で18%、4カ月で8%程度だ。CRSの主な症状には、難聴や先天性心疾患白内障など目の症状、発育の遅れなどがあり、感染時期などにより異なる。 

出典:妊娠中の風疹、赤ちゃんに影響は 「産みたい」母の決断”<朝日新聞デジタル>

自分に風疹の抗体があるかを調べることはできる?

最初の妊婦健診(妊娠3ヶ月ごろ)で必ず血液検査を行い、風疹の抗体があるかどうか調べてもらえます。しかし上の説明にある通り、妊娠3ヶ月になって「風疹の抗体ないから気をつけてね」と言われたところでもう遅いんですね。検査薬で陽性が出たら、その瞬間から風疹を警戒しましょう。そして血液検査で抗体があるとわかったら、警戒を緩めてOKです。

妊娠中、風疹にかかってしまったら?

風疹は他の感染症と違い、母体が感染すると胎児への影響を阻止する方法がありません。薬の投与などの処置ができず、祈る他ないのです。ですから、絶対に感染しないことが大切です。

風疹の抗体がない人が、感染しないためにやれることはある?

ちなみに妊娠してから風疹の抗体がないと判明したところで、すでにワクチンを摂取することはできません。常にマスクをして、人との距離を開けるという水際対策のほか手立てはないでしょう。しかしどんなに外出先で気をつけていても、家族が風疹に感染して、それを家庭に持ち帰ってきたら本末転倒です。同居家族には、最寄りの内科で一刻も早くMRワクチン(麻疹・風疹セットのワクチンが主流)を接種してきてもらってください。自治体によっては、MRワクチンの接種は無料です。「○○市 風疹 助成」で調べると、自治体のホームページで助成金の詳細が確認できます。

2.サイトメガロウイルス(第2子以降の妊娠 or 子どもと関わる職業 は重要です)

サイトメガロウイルスに感染すると赤ちゃんにどんな影響が出るの?可能性は高い?

胎児に流産・死産、脳や聴力障害などが生じることがあります。成人女性の70%はすでに抗体がありますが、妊娠中の女性が初めて感染すると、胎児に影響が出ることがあります。”影響が出ることがある”というのは、感染してもウイルスが母体に留まり赤ちゃんまで到達しないケースもあるからです。実に50-70%は、ウイルスは胎児までいかないとされています。さらに運悪く赤ちゃんが感染してしまっても、脳障害などの症状が出るのは10-30%です。

サイトメガロウイルスに、妊娠中初めて感染してしまったら?

薬を投与して、感染をなかったことにすることはできません。しかも大抵は感染しても無症状なので、常に「もしかしたらサイトメガロウイルスかも」と疑う気持ちでいないと、エコー検査や出生後の健診で異常を指摘されたところで、原因がサイトメガロウイルスにあると突き止めることも困難です。さらに、妊娠中にサイトメガロウイルスに初感染=100%障害児の誕生ではないために、風疹と違って医師から中絶するか聞かれないのもこのウイルスの怖いところです。

サイトメガロウイルスの抗体があるかどうか調べることはできる?

抗体検査は2000~3000円の血液検査で行うことができます。結果は早くわかるに越したことはないので、直近の健診(初診でもOKです!)で血液検査をお願いしましょう。ごく一部のクリニックでは、頼まなくても初診のメニューに入っているところがあります。

サイトメガロウイルスの抗体がない場合、防ぐことはできる?

血液検査で抗体がないことが判明したら、以下を徹底しましょう。サイトメガロウイルスは、小さな子どもの唾液や尿を通じた接触感染に気をつければOKです。

  • 子どもの唾液が口に入らないように徹底
    • 食べ残しを食べない・カトラリーやコップを共有しない
    • 唇や、よだれがつきがちなホッペにキスしない
    • 舐めたおもちゃを触ったら、すぐに手を洗う
  • 子どもの尿が口に入らないように徹底
    • おむつ替えをしたら、すぐに手を洗う

いま流行中のCOVIT-19の感染予防と違うところは、飛沫感染はしないということ&感染力は高くないということです。詳しくはこちらのサイトメガロウイルス感染症患者会のサイトに非常に詳しく&わかりやすくQ&Aがありますので、抗体がないことがわかったら不安解消のために熟読してください。

3. トキソプラズマ (食べ物とネコ・土に注意)

トキソプラズマに感染すると赤ちゃんにどんな影響が出るの?可能性は高い?

流産・死産、脳(水頭症、脳室拡大、脳内石灰化)や眼(網膜脈絡膜炎)の障害などが生じることがあります。感染しても何も症状が出ないラッキーなケースがある一方、成長してから障害の症状が出ることもあります。トキソプラズマは家畜の肉や、感染して2週間以内の猫の糞や土の中などにいる”よくある”原虫です。妊娠中初めてトキソプラズマに感染してしまうと、感染時期にもよりますが10-70%の割合で赤ちゃんも感染します。注意したいのは妊娠中期~後期です。妊娠初期に感染しても、赤ちゃんも感染&さらに影響が出る割合は1%未満~5%程度(週数が上がるにつれて、5%に近く)です。妊娠中期に入ると、22~32週あたりをピークに最大で9%まで割合が上がります。

健康な人が感染しても問題はありませんし、抗体を持っている妊婦さんが再感染しても胎児にまで影響が及ぶことはありません。ですから、抗体があるかどうかを妊娠初期に知ることが大事です。

トキソプラズマの抗体があるかどうか調べることはできる?

できます。たった自費診療1000-1500円の血液検査で、抗体の有無がわかります。ぜひ直近の妊婦検診(初診もOK!)で申し出ましょう。ちなみにおよそ半数のクリニックでは、頼まずとも初期検査の項目に入っているそうです。

もしトキソプラズマにかかってしまったら?

妊娠中に初感染してしまっても、母体からトキソプラズマ原虫が赤ちゃんに行くまではタイムラグがあります。そこで感染が判明したら直ちにアセチルスピラマイシンという薬を投与することで、トキソプラズマ原虫が赤ちゃんの方へ進むのにブレーキをかけることが可能です。しかも100%母子感染を食い止めることは難しいものの、薬の投与で障害の程度を軽くできることは実証されています。

トキソプラズマを予防することはできる?

できます。抗体がないと診断された方は注意が必要ですので、以下のリンクを熟読してください

4. リステリア食中毒

リステリア食中毒にかかると、どうなるの?赤ちゃんにどんな影響が出るの?

日本でリステリア食中毒になることはかなり稀(推定患者数200人/年)ですが、妊婦が感染すると重症化し、髄膜炎・敗血症を起こすこともあります。実際に、流産・早産・死産の例もあるので要注意です。

詳しく見ていくと、妊娠初期に妊婦が感染すると、20%の胎児が死亡。これは感染のタイミングが早ければ早いほど流産しやすいです。また無事に出産できたとしても、68%は新生児リステリア感染症が認められています。治療したにもかかわらず24%が死亡、12%に神経学的後遺症を認めました。参考文献

抗体があるか調べることはできる?予防することはできる?

食中毒なので、抗体を調べることはできません。ただし、予防することはできます。

生で食べてはいけない食品(食べないか、十分に加熱する)

ナチュラルチーズ、生ハム、ミートパテ、無殺菌の牛乳、スモークサーモンが日本の食卓でも要注意の”リステリア食中毒”実績ありの食品です。国内での食中毒実績がないものの、リステリア菌に汚染されていることがわかっているのはネギトロ・魚卵(すじこ、たらこ、明太子)です。海外の例も含めると、こんな感じです。欧米ではメロン、ホットドックからの感染報告があるので海外在住の妊婦さんは特に警戒しましょう。

引用元:妊婦や基礎疾患を持つ人が注意しなければならない食中毒~リステリア~<一般財団法人東京顕微鏡院>

生野菜は、十分洗って食べましょう。

肉を調理するときは、生肉に触れた手や調理器具を直ちに洗います。リステリア菌は冷蔵庫の中でも増殖できるので、肉類に関わらず、冷蔵庫の中で長期間保存しすぎた生食品は念のため口にしない。を徹底しましょう

リステリア菌がついているかもしれない食材を食べてしまったら?

うっかり上記の食材を食べてしまったとしても平均潜伏期間29日(17~67日)を超えても何の症状も出なければ、リステリア菌に感染しなかったと考えて特に気にしなくて良いでしょう。

万が一リステリア食中毒になってしまったら、抗生剤治療が実施されます。しかし、それで胎児へのリスクがゼロになるわけではありません。

5. 麻疹(はしか)

妊娠中に麻疹にかかるとどうなるの?

妊婦が麻疹にかかると、重症化しやすくなります。具体的には、肺炎の発症は2.6倍、死亡率は6.4倍です。胎児に障害という形で先天奇形が出る割合はかなり低いですが、妊娠中に麻疹にかかると3割が流産・早産となります。また重症化すると、母体救命のために人工妊娠中絶が行われることもあります。

※参考文献:麻疹流行とその対策<日本産婦人科医会>

麻疹の抗体が低い。予防する方法はある?

すでに妊娠してしまうと、麻疹のワクチン接種はもうできません。流行時期でなければそこまで怯えることもありませんが、麻疹の流行情報が出たら人混みに近づかない&マスクをする、などの水際対策をとりましょう。また風疹と同じで、家族にMRワクチンを接種してもらい家庭内感染のリスクを下げる対策も有効です。

まとめ:風疹・サイトメガロウイルス・トキソプラズマ・リステリア食中毒・麻疹の5つに気をつけて

「妊娠中、気をつけること」で一番メジャーなのは酒・タバコですが、それよりもっと怖い”一発アウト”の目に見えない感染症ウイルス・菌などをご紹介しました。「感染しても、胎児を救う手立てがないから」とか「感染する人が日本には少ないから」という”大人の事情”で、麻疹・風疹以外は積極的な抗体検査や啓蒙活動が行われていないのが実情です。

いま、妊娠期間を過ごしている皆さんの目下の恐怖は新型コロナウイルスだと思います。実際、胎児への影響は症例が少ないためまだ解明されていませんし、数年では解明されないでしょう。コロナ対策は、そのままこれらの感染症・菌の予防に活かされます。

妊娠中は気をつけても気をつけすぎることはないです。これは子どもが生まれてからもそうですが、自分と子どもの命は国や会社や学校が守ってくれるわけではありません。周りの人が全員バカにしてきたとしても、用心して過ごしてください。自分の選択・行動で子どもの健康が守れますから、心を強く持って頑張りましょう。

妊娠中だからと言って、病気になっても全く薬が飲めないわけではありません。どんなことに注意したらいいの?は、こちらの記事で解説してます。

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