「初期流産はママのせいではない」とはよく聞きますが、実際に流産してしまうと「なんで私だけ?」「何か赤ちゃんに悪いことをしたに違いない」「また繰り返したらどうしよう」と、苛立ちや不安が拭えません。初期流産は、本当に私のせいではないのですか?
お辛い経験をされましたね。
おそらくその流産は、本当にあなたのせいではありません。
「おそらく」というのは、ごくごくわずかに母親に流産の原因があるケースも中にはある、からです。
その証拠に、流産にまつわる5つの迷信の真相とその根拠を解説します。
本記事の内容
- 【迷信①】流産は繰り返す?
- 【迷信②】軽い出血やお腹の張りは流産の兆候?
- 【迷信③】妊娠初期に風邪をひいたら流産する?
- 【迷信④】中絶経験があると、流産しやすくなる?
- 【迷信⑤】運動すると流産の危険性が高まる?
記事執筆にあたっては、アメリカの大手育児雑誌Parentsの記事「5 Miscarriage Myths」を参考にしました。
どんなに初期の出来事であっても、何回目の妊娠であっても、流産を心配したり悲しんだりするのは当然のことです。
かたや人生で最も祝福を受けて生まれてくる赤ちゃんと、かたや生まれた瞬間弔われる赤ちゃん・・・同じように妊娠生活をスタートしたはずなのに、描いていた姿とかけ離れたエンディングを迎えてしまうのが流産です。このギャップの大きさが、あなたの抱えるストレスやショックをより深刻なものにしています。
例えエコーに写る前でも、心拍が始まる前でも、赤ちゃんは赤ちゃん。
流産は思いっきり悲しんで良いのです。
その上で、流産を必要以上に怖がらずに済むように、記事の続きを読んでください。
【迷信①】流産は繰り返す?
妊娠した女性のうち、実に7人に1人は流産を経験しています。実際には、2回以上妊娠経験がある女性も多いので流産経験者は20%に迫るとも言われています。
初期流産の60%は、染色体異常が原因です。ですから、繰り返しません。
流産を1回経験したからといって、2回目が起こってしまうリスクは、実は初めての妊娠の時と変わりません。すでに2回繰り返してしまった人は20%、3回繰り返してしまった人は30%、4回目移行は40%にまでリスクは上昇します。しかし、4回も流産を経験してもまだ60%は正常に出産できるチャンスがあることに注目してください。
それでも、あなたが流産を3回以上繰り返して苦しんでいるのなら、生殖内分泌学者による検査を受けてみる価値があります。
しかもラッキーなことに、その検査で「不育症」と診断されても、多くの治療法があります。
ホルモンバランスの問題、自己免疫疾患などはそれぞれホルモン療法や処方薬での治療が可能です。子宮や子宮頸管の解剖学的な原因なら、外科手術で改善できます。
実際にインスタグラムなどで「#不育症からの妊娠」などのタグを見てみると、不安を抱えながら妊娠生活を送り、晴れてママになった多くの妊婦さんの軌跡を辿ることができます。
【迷信②】軽い出血やお腹の張りは流産の兆候?
妊娠初期の軽い出血は、実に全ての妊娠の40%でおこります。お腹の張りに関してはもっと一般的で、子宮が大きくなる際の伸縮痛としてほとんど全ての女性が経験します。
しかし「問題ない」とわかってはいても、主治医があなたの体調に気を配れるように、健診の際に症状を申告しておくことは必要です。
もし骨盤の片側から、激しい痛みを感じた時は、直ちに医師に連絡してください。子宮外妊娠の可能性があります。
【迷信③】妊娠初期に風邪をひいたら流産する?
一般的な風邪やウイルス性胃腸炎が、妊娠に影響を与える可能性はありません。
ただし38.8度以上の高熱は、注意が必要です。あまりにも身体の芯が高熱を持ってしまうと、妊娠8週までは胎児を死亡させてしまう可能性があるからです。妊娠中にも使える解熱剤を処方してもらうため、医師に連絡してください。
注意した方がいいことが明らかな病気もあります。
リステリア感染症はその代表例です。リステリア菌に感染したときの流産リスクについてはこちらの記事で詳しく解説しています。
リステリア感染症の症状はインフルエンザに似ていることもあるので、すぐに主治医と連絡をとってください。細菌テストの後、必要に応じて抗生物質による治療が可能なことがあります。
【迷信④】中絶経験があると、流産しやすくなる?
1~2回の中絶経験は、あなたの妊娠継続能力に影響を与えるものではないことがわかっています。またカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究によれば、中絶の手段(外科手術 or 服薬による措置)もその後の妊娠に影響しません。しかし、念のために中絶経験については必ず主治医に申告しておいてください。
スリバニバス博士は「非常にサンプルは少ないですが、3回以上の中絶経験で子宮頸管の完全性を損なう可能性を示唆する研究結果もあります」と指摘します。
また、中絶手術から3ヶ月経たずに妊娠した場合は、流産のリスクが増加するといったデンマークの研究結果があります。
【迷信⑤】運動すると流産の危険性が高まる?
妊娠中の適度な運動が、流産のリスクを高めるという証拠はありません。
それどころか、ほとんどの運動はむしろ健康的な妊娠生活・出産のために推奨されています。避けた方が良いのは乗馬やスキー、サッカーやバスケットボールといった転倒や接触事故の危険性が高い活動に限られます。
それ以外のアクティビティは、水分をたくさん摂取して身体がオーバーヒートしないように気をつければ大丈夫です。
コロンビア大学メールマン公衆衛生大学院の研究者は、ニューヨーク市では、妊娠中に運動をしていた女性は流産のリスクが40%下がったとすら指摘しています。
医師から特別な指導がない限りは、適度な運動はむしろ行うべきなのです。
頭ではわかっているつもりでも、いざ流産してしまうと「あの時のあれが」と原因を求めたくなってしまうものです。しかし、ほとんどの流産は染色体異常が原因ですからあなたにはどうしようもなかったことです。実際、あえて言わないだけでかなり多くの女性が流産(や死産)を経験しています。
流産は堂々と悲しんでいい出来事です。何年経っても忘れなくていい出来事です。
ぜひSNSなどのオンラインコミュニティを活用して、悲しみを他の経験者を共通してください。匿名のまま気持ちを吐き出せるので、気楽ですよ。
次の妊娠は、大丈夫です!