
出生前診断に興味があるのですが、難しくてよくわかりません。誰でも受けられますか?全部の病気がわかるのですか?お金はいくらかかりますか?
こんな疑問に答えます。
本記事の内容
- あなたがどの出生前診断を受けるべきかと検査費用がわかる
- 出生前診断を受ける前に準備するべきことがわかる
- 出生前診断のスケジュールがわかる
私は2回妊娠・出産し、2回とも大学病院にて出生前診断を受けました。
義実家にダウン症を含む重度心身障害者が2人もいたため、夫婦間で話し合い、自然な流れで出生前診断の実施を決めました。
出生前診断は20代でもOK。ただし検査は何種類かあり、どれを選ぶかで費用は5千円~20万円まで様々
【重要】出生前診断では、全ての病気を調べることはできない(数ある先天性疾患のうち、4分の1だけ)
通院していた大学病院で出生前診断の相談をすると、簡単なリーフレットを渡されました。そこにはこんな説明がありました。
赤ちゃんの3~5%は何かしらかの病気を持って生まれてくると言われており、そのうち約4分の1が染色体異常によるものです。出生前診断は、妊娠初期の時点で赤ちゃんの染色体異常のうち一部(7割に相当)があるかどうかを知るための検査です。
逆にその他の染色体異常や、そもそも染色体異常と関係ない残り4分の3の先天性疾患については中期・後期の精密エコーでしか、あるいは産まれてみないとわかりません。
なるほど、出生前診断は万能ではないことがわかります。
では次からは、いくつか種類がある検査のうちどれを受ければいいのかを考えていきましょう。
【図解】出生前診断一覧
図はクリックで拡大します
35歳未満が受けられる出生前診断は3種類:超音波検査、コンバインド検査、クアトロテスト
2022年4月ごろから、NIPTの年齢制限(原則35歳以上)が撤廃されることになりました。撤廃後は、不安を抱える妊婦なら年齢に関わらずNIPTを受けられるようになります。(2022年2月18日各社報道あり)
超音波検査
1番安いです。エコーで赤ちゃんの首のむくみ(ダウン症児に特有)を計測します。エコーで異常がないか見るだけなので、結果はその場でわかりますが感度は75-80%程度です。
クアトロテスト
妊婦さんから採血をして、染色体異常の可能性を調べます。感度は80%で、結果は2週間でわかります。
実際にクアトロテストを受けた時のレポートはこちらに詳しくまとめました。

コンバインド検査(オスカー検査とも言う)
こちらは精密エコー+血液検査の合わせ技(コンバインド)で、妊娠11週という早いタイミングから受けられるのが特徴です。感度も83%と、クアトロテストより若干高いのも好印象。ただし、クアトロテストなら分かる”開放性二分脊椎”については知ることができません。これについて担当医に質問したところ「開放性二分脊椎はおよそエコーで見えるから、大丈夫と思う」と言っていました。
実際にコンバインド検査を受けた時のレポートはこちらにまとめています。

35歳以上が受けられる出生前診断は3+1種類:NIPTが受けられるようになります
2022年4月ごろから、NIPTの年齢制限(原則35歳以上)が撤廃されることになりました。撤廃後は、不安を抱える妊婦なら年齢に関わらずNIPTを受けられるようになります。(2022年2月18日各社報道あり)
NIPT受けてきた!パパッと血抜かれて拍子抜けするくらいすぐ終わった…
全部こみこみのコースにしたから高かったけど、後で受けとけばよかったって思いたくなくて😢— Hana💐初マタ24w (@hanaoto0830) May 23, 2020
NIPTでわかる染色体異常
NIPTはダウン症・18トリソミー・13トリソミーの3つの染色体異常を99%という高い感度で調べることのできる、血液検査です。この3つの染色体異常は、全染色体異常のうち7割に相当するメジャーな疾患です。
NIPTはハイリスク妊婦しか受けられない。しかも検査費用は、わざと高額
今日はNIPT検査に来ました。カウンセリング済みなので、採血前にもう一度カウンセラーさんから短めの説明と確認→採血で30分で終わり。会計は15万円結果は来週。
— まりも☺︎@11m (@yukinohino) March 25, 2020
ちょっと気になってたのが18,13,21以外の染色体異常についても調べられるのか?これは認可されてないからこちらではやってないとのこと。
血液検査なので母体・赤ちゃんともにノーリスクで受けることができるにも関わらず、感度99%という精度の高さなのが魅力的です。
しかし、日本では誰でも気軽に受けることができないように条件を設けたり検査費用を超高額にしたりしています。日本の社会福祉の実態や家計状況を鑑みると、フェアではないと個人的には感じます。
またNIPTを受けるには遺伝子カウンセリングが必須ということで、実施できる医療機関も限られています。
ハイリスク妊婦以外(20代妊婦など)に対してNIPTを実施している認可外施設もある
NIPT受けてきた!認可外のクリニックだけど待合室密な大盛況っぷり💦同じ時間にカウンセリング受けた人みんな全染色体検査だった〜プライベートでは周囲に誰も経験者いなかったけど、クリニック来てこんなにいるんだって心強く感じちゃった〜
— 🍤ore®︎☺︎_2/26👶🏻🎉6m←41w1d (@BambioreB) August 2, 2020
実際に、20代でもNIPTを受けたい!という需要は一定数あり、その需要に応える形で、年齢制限なしでNIPTをしてくれる施設はたくさんあります。
認可外施設で検査をしたいなと思ったら、申し込む前に、妊婦健診で通っている主治医にわからないことをしっかり相談すると良いです。NIPTについてはその実施方法について国でも盛んに議論をしている最中なので(遅すぎですけど)、最新情報はネットよりお医者さんに聞くのがベストです。
(追記:2022年2月18日の報道を受けて)
国は、2022年4月頃からNIPTを受けられる妊婦について年齢制限を撤廃することを決めました。
年齢制限を設けることによって、かえって認可外施設でNIPTを受ける人が増え、混乱が起きたからだとしています。この年齢制限撤廃に伴って、検査費用が変わるかどうかについてはまだ情報がありません。
いずれかの出生前診断で陽性判定だったら→感度100%の確定診断(羊水検査か絨毛検査)に進む
これまで紹介した出生前診断は全て、母体・赤ちゃんにとってノーリスクな代わりに、100%確実な検査ではありませんでした。
基本的にはこれらの検査で陽性判定が出たときに初めて、感度100%の確定診断(羊水検査か絨毛検査)に進むことになります。99%と最も感度の高いNIPTですら「残り1%は偽陽性の可能性がある」ということで、陽性判定の場合は確定診断のステップに進むのです。
羊水検査の結果、
性染色体の異常は無し🙆NIPTの結果『Detected』は覆されました☺️
Detected=もしかしたら異常かも(Notと言い切れない)
って感じだから羊水検査で確定診断受けてね〜
くらいの結果だったみたい。ひとまず良かった。#羊水検査
— คุมัคุมัโคくまくまこ (@kumakumako12) August 19, 2020
逆に、これまで紹介したノーリスクの出生前診断を受けずして、病院がいきなり確定診断を受けさせることはありません(※例外はあります)。
理由は、検査に伴う流産・死産のリスクが結構高いとされているからです。お腹にプスッと針を刺して検体を採取するので、絨毛検査で100分の1、羊水検査で300分の1という高さで流産・死産のリスクがあります。「実際は染色体異常なんてないのに、検査をしてしまったばっかりに赤ちゃんが死んだ!」なんてことが気軽に起きてしまっては、妊婦さんやその家族はもちろん、病院にとっても最悪です。従って、よほど特殊な切羽詰まった事情がない限りは、いきなり確定診断を受けることはありません。
ですからもしあなたが羊水検査や絨毛検査を受けることになったら、不安・疑問はネットで解決しようとするのではなく、病院の遺伝子カウンセリングにてしっかり医師と話し合って欲しいと思います。
超重要:出生前診断を受ける前に準備するべきこと→陽性判定が出たらどうするか”予め”決める
このツイート、首がもげるほど同意できます。
そして、安心材料のために受けるものでもない。
— Hana (@Hi_Ha_Sa080310) August 23, 2020
陰性だったら「良かったね〜」で終わるけど、もし陽性だったら?そんな賭けみたいなつもりで受けるものではない。羊水検査する前も後も恐怖と不安しか無かった。
「陽性だったら、どうするの?」
この準備は超重要です。
これができない夫婦は、いくらお金があっても絶対に出生前診断を受けるべきではありません。
その準備とは「検査結果が陽性だったら、中絶するかしないか」をしっかり夫婦で話し合い、100%の確信とともに結論を出しておくことです。この話し合いを行わずに、「ダウン症じゃないと知って安心したいから」といったゆるふわなテンションで出生前診断を受けると、陽性結果が出た時に夫婦関係ならびにご自身の人生が崩壊します。
夫婦で話すだけではよくわからない場合は、医療機関にて遺伝子カウンセリングを受けることができます。(NIPTはカウンセリングが必須です)
出生前診断で陽性判定が出た夫婦の約9割が中絶を選択している現実
ちなみに2014年の時点では、出生前診断(確定診断)で陽性判定が出た夫婦のおよそ9割が中絶を選んでいるそうです。
筆者たち夫婦も、陽性確定時は絶対に中絶すると決めていました。
しかし、口では「諦めよう」と誓い合っても、いざ陽性判定を見たらどうなっていたかはわかりません。
陽性判定が出てから、中絶可能期間のタイムリミットまで1週間未満なことも
例えばクアトロテストを妊娠16週に実施したとすると、結果がわかるのは2週間後です。妊娠18週というと胎動を感じますから、お腹の赤ちゃんへの愛着は相当なものです。そこでもし陽性判定が出たら、すぐさま羊水検査を実施します。その結果が出るのはまた2週間後ですから、妊娠20週(妊娠6ヶ月)に入ってようやく染色体異常の有無が確定します。さて、そこで「あなたの赤ちゃんは100%ダウン症です」と宣告されて、どうしますか?
日本の法律で、人工妊娠中絶が認められるのは妊娠21週6日目まで。タイムリミットが1週間も無い中で、半年かけてお腹の中で育ててきた大事な赤ちゃんの運命を、夫婦円満に決めるのははっきり言って無理でしょう。
ですから、出生前診断を受ける前から必ず、陽性判定が出たらどうするのかを夫婦で話し合っておくことは重要です。
ダウン症・18トリソミーの子を、生涯に渡って面倒を見るイメージが具体的にわかない時は?
身近に重度心身障害者がいない場合には、「陽性判定を受ける」ということが具体的に何を意味するかがイメージできないと思います。ダウン症や18トリソミーの子を、生涯育てるために、家族や親戚の生活やライフプランは具体的にどう変わるのか、よく想像してみてください。
おすすめは、実際に介護されている方のブログやTwitterです。特に子どもが成人している方の話がリアルだと思います・・・赤ちゃんや幼児はみんな可愛いですし、身体も小さいので。
幸せな家庭、崩壊している家庭、バランスよく情報収集するといいです。
以上を踏まえ、夫婦で話し合い、出生前診断を受けることに決めた方は次の検査スケジュールをご覧ください。
出生前診断のスケジュール:いつから、いつまでに受ける必要がある?
図解しましたので、ご覧ください。クリックで拡大できます。

あなたが35歳以上であれば、心拍確認時にNIPTの案内が担当医からあるかもしれません。(追記:2022年4月ごろから年齢制限が撤廃されます) それ以外の場合は第1回妊婦健診の際に、出生前診断を希望する旨を自己申告しましょう。
医療機関によって実施できる検査に限りがありますので、基本的には選択肢の範囲から納得のいく検査を選ぶ形になります。「どうしてもクアトロテストをやりたいのに、かかりつけ医では超音波によるスクリーニングしかやっていない」というような場合には、別の医療機関にて検査だけを受けることもできるので主治医に相談しましょう。
※カトリック系の病院など、赤ちゃんの中絶につながるような検査は一切行わないし情報提供もしないというポリシーの医療機関もあります。
35歳未満の方で無認可施設でNIPTを受けると決断した場合は、自分で検査機関に連絡をとって予約をとる必要があります。残念ながら陽性判定が出てしまった際のフォローは無認可施設にはあまり期待できませんから、万が一に備えて、妊婦健診の際に担当医に検査を受ける(受けた)ことは申告しておきましょう。(追記:2022年4月ごろから年齢制限が撤廃されます)
出生前診断について:まとめ
出生前診断を受けることは夫婦の権利ですから、「出生前診断を受けたい」といって怒られたり否定されたりすることはありません。
ただし、以下の点を十分理解する必要があります。
- 出生前診断は万能ではないので、陰性判定だったとしても「やっぱり染色体異常がありました」と言うことや、「他の重い先天性疾患がありました」と言うことは普通にありえる、と理解する
- 陽性判定が出てから「産む、産まない」を冷静にかつ夫婦円満に決めるのは、時間的制約や精神的負担から不可能。出生前診断を受ける前に、必ず「陽性判定が出たらどうするか」を話し合って最終結論を出しておく
- 出生前診断(最初に受ける、非確定診断)を受けられるのは早くて妊娠11週ごろ、遅くとも妊娠16週前半までには終わらせておきたい
納得のいく決断ができますことを、お祈りしています。