幸せの先送り、子ども時代は大人になる準備期間ではない

幸せの先送りのアイキャッチ

以前、トップ校から底辺校までやってる教育がみんなダメという話をしました。それらの学校は、知識偏重型でカリキュラム至上主義を貫いているから、という理由でした。

ところが多くの保護者が、現行制度の問題点を認識しているにもかかわらず

従来のカリキュラムを捨てて進歩的な教育に全振りするかというと、そうはなっていない

のです。

脳科学者の茂木健一郎氏はこう語ります。

これは結局、ペーパーテスト以外でどうやって学力を測るのか、何を基準に頭のよしあしを測るのかわからないから、とりあえずできている道に進ませる、そういうことだと思うんですよ

茂木健一郎、竹内薫『10年後の世界を生き抜く最先端の教育』

まだまだペーパーテストの学力だけでも名門大学へ行ける、今。

あえてリスクをとって、新しい教育に全振りさせる意味はあるのでしょうか?

記事で紹介されている商品を購入すると、売上の一部がロジカル育児に還元されることがあります🌱

いまの時代に生き残るためのマインドセットを養おう

社会では、課題を見つけて解決することにお金が生まれます。その課題が目まぐるしく変わっていくのが、現代です。

このような社会では、固定されたゴールに向かってコツコツ積み上げることに慣れた人間に、できることはありません

具体的に説明しますね。

パソコン1つで完結する仕事に憧れている人は、たくさんいます。時間や場所に縛られず、自由に働けるからというのが人気の理由です。

たとえば、こんな仕事です。

  • ブログ
  • SNS
  • YouTube
  • 投資
  • プログラミング

どれでも、今日から始められそうです。

でも憧れている人口の多さに対して、実際に始める人はほんの一握りです。

「稼げるYouTuberになる」と決意して、コツコツ積み上げている最中に、もしもYouTubeがオワコンになったら?

「投資でお金を増やす」と決意して、コツコツ運用した後で、もしもリーマンショックが再来したら?

ほぼすべての人は「どれをやったら一番コスパよく稼げるかな」と悩み続け、結局どれも始めません

今の社会は、変化することが前提。固定されたゴールに向かってコツコツ積み上げることしかできない人間に、挑戦できるものなど一つもないのです。そして挑戦しない人に、得られるものは何もありません。

新しい教育スタイルでは、幸せの先送りをしない

幸せの先送りをされ続ける子どもたち

42.195km目指して走ってきたランナーに、ゴール目前で、あと1km追加!を繰り返してみてください。誰も走れません。死人が出ます。

でも、子どもたちの現実ではそういうことが起きています。

先日、中学受験カウンセラーの先生がおっしゃっていたこと。御三家に合格することだけを目指して頑張ってきた子が、入学した途端に鉄緑会(東大受験対策塾)に入れられて「サピよりきつい」と言って泣くのだそうです。

東大に入るために、

鉄緑会に入るために、

中学受験をして御三家に入るために、

最難関校に強いSAPIXに入るために、

小学校の1〜2年生から席を確保するために、

入塾テストを受けるために

3歳からZ会としまじろうをかけもち・・・

ということが、東京では起きています。これが地獄でないなら、何でしょうか。

昨今はますます、子どもの時代が「大人になるための準備期間」のように捉えられていますね。そうして「幸せの先送り」が進んでいく。すると子どもたちは、自分がいつ幸せを享受できるのか、一向に実感できない。

養老孟司『子どもが心配: 人として大事な三つの力』PHP新書

アクティブラーニングは、幸せの先送りをせずにスキルを身につけられる

なぜ新しい教育は、アクティブラーニング推しなのか

アクティブラーニングは、生徒がいまこの瞬間に興味があることに集中しながら、学び方を学んでいきます。

好きなことを深掘りすればいいのですから、学習の過程そのものを楽しいと感じられます。

そして楽しさの副産物として、「学ぶ方法を学ぶ」という一生使えるスキルの獲得にもつながるのです。

教育の責任をとることが教育

アクティブラーニングの環境では、何を学ぶか、どのくらい難しいものに挑戦するかは、全て生徒次第です。

自分で決めるのですから、やすきに流れる人も必ず出てきます。

よくアクティブラーニングが批判されるのが、この点です。

つまりアクティブラーニングは学習意欲の高い子には理想的なアプローチだが、学習意欲の低い子はボーッとしているだけで終わってしまう、というのです。

しかし、こうした後悔や失敗も含めて、「教育の責任は生徒自身が取るべきである」と主張する人がいます。それが、無料のオンライン教育のプラットフォームである、カーンアカデミーの創立者、サルマン・カーン氏です。

教育の責任をとることがすなわち教育であり、学習の責任をとることがすなわち学習です。生徒の立場からは、責任をとることで初めて真の学習が可能になります。

サルマン・カーン『世界はひとつの教室 「学び×テクノロジー」が起こすイノベーション』ダイヤモンド社

楽単で履修を決めてしまった、私の後悔

私は早稲田出身なのですが、早大では新学期になると「マイルストーン」という分厚い電話帳のような冊子が生協にズラリと陳列されました。「マイルストーン」には、ほとんどすべての講義の口コミが載っていて、成績評価の厳しさを星マークでランク付けしています。学生は、楽に単位が取れる科目(通称、楽単)の情報を求めて「マイルストーン」をめくり、履修登録を進めるのです。

私も、そういう学生のひとりでした。

私は10年経った今もなお、楽単かどうかを基準に履修科目を選んだことを後悔しています。貴重な学習機会を、(そして親が支払った)高額な学費を、ドブに捨てたも同然でした。

楽単でスケジュールを埋めた事実は覆りませんが、私はその結果(10年も消えない後悔)を引き受けました。

そして、2度と同じ過ちはしないと決めました。サルマン・カーン氏の言葉を借りれば、私はこうして責任をとることで「真の学習」を達成したようです。


私たち親世代は、アクティブラーニングに馴染みのない人がほとんどですから、未知の環境に子どもを入れるのは怖いと感じるかもしれません。

それでも、子どもたちがアクティブラーニングから得られる本質的な学びに考えを及ばせると、選択肢に入れない方が逆に怖い…そんな気持ちになってきます。