名門校では、生徒の心理的安全性が確保されない

名門校の闇アイキャッチ

公立中は、荒れてる子がいないか心配。私立のほうがのびのび過ごせそう

こんなふうに思っている人、多そうです。

公立校は、学区に住むすべての子どもに対して開かれています。それに対して私立校では、一定のスクリーニングが行われます。そのため、私立校のほうが治安がいい、安心、と見なされるのです。

しかし世界的に見ると、厳格な入学審査を行う私立学校は少数です。入試があっても、入学後に学習サポートが必要かを見極める目的であって、「点数が低い子は、うちには入学できません」と足切るための試験ではありません。

これでは学習意欲の高い子と低い子がごちゃ混ぜになって、よくないのでは?と思えますが、高く評価されている教育システムでは、難しい入学試験を実施する必要がない、というのが(日本以外の)常識なのです。

一体、どうしてでしょうか?

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名門校は、特権意識が芽生えやすい

学校のブランド価値を内在化してしまう(特権意識)

2000年代中頃。私は中学受験をして、第1志望の名門校に合格しました。学校の名前を、仮にPスクールとしましょう。

Pスクールの教師たちは、毎日、こんな言葉を私たちにかけました。

「Pスクールの生徒として相応しい行動をするように」

「Pスクールの生徒としての誇りを持ちなさい」

そのような言葉を毎日かけられると、子どもたちはどう考えるようになるでしょうか。

「Pスクールの生徒は特別で、価値がある」

こうなります。これが、特権意識です。

特権を持たない人への思いやりが失われる

特権意識が育つと、特権を持たない人に対する扱いが雑になります。

ある日、こんなことがありました。

Pスクールの近所にあるサイゼリヤから、苦情が入ったのです。サイゼリヤの従業員曰く、ドリンクバーだけを頼んで何時間も居座るPスクールの生徒がいて困っているのだそうです。そして、従業員が「迷惑なので、退店してほしい」と頼むと、

「金を払っているのだから、ここに座っていて何が悪い?」

と、横柄な態度を取られたそうです。

この生徒は、サイゼリヤの従業員を明らかに見下しています

そしてサイゼリヤの従業員を見下すことでこの生徒(と仲間たち)は、自分も同じ立場になったら、このような横柄な態度を取られるかもしれないと、潜在的に怯えることになるのです。

これが、特権意識の恐ろしいところです。

名門校は、生徒の個性<学校のブランド

ブランド維持のため、態度を豹変した学校

名門校は、著名人を多数輩出していることが誇りです。母校では中1で、著名な卒業生から1人を選んで発表するという「探究型学習」をやらされるほどです。

Pスクールの卒業生の中でも、大物芸能人Cは別格でした。

Cは学校に莫大な寄付をしたらしく、Cの名前を冠した講堂がありました。講堂にはCの像まであって、その崇め奉られっぷりといったら!

そんなある日、週刊誌でCのスキャンダルが報じられました。

するとPスクールでは、途端にCについて話すことがタブーになったのです。C講堂は、一夜にしてただの講堂になりました。

Pスクール側の豹変っぷりを目の当たりにして、私は恐ろしさを感じました。

道を外れた途端に、存在を消されるという恐怖

有名人すら、道を外れたらこの扱い。いわんや、一般の生徒をや。

中2の時、友だちの非行がバレ、即退学になりました。

その時も、Pスクールは彼女の存在を亡き者にしました。

退学が決まると、彼女の痕跡はすべて消されました。

教師も周囲の生徒も、あたかも彼女は初めからいなかったかのように振る舞いました。

道を外れた途端に、存在を消される。

しかも道を外れたかどうかの判断は、自分ではなく、学校が行う。

これは思春期の子どもが経験するには、あまりにも辛い出来事でした。

名門校では、学校の移動が難しい

生徒の「結束力が強い」の実態

名門校の生徒は、仲間意識がとても強いです。それを「結束力が強い」と評価する人もいますが、実態はこうです。

Pスクールの生徒の中には、極めて少数ですが、海外留学や他校に転校する選択をする人がいました。そのような、Pスクールのエコシステムの外に出る選択をした人を、私たちがどんなあだ名で呼んでいたか、想像できますか?

「裏切り者」です。

そのようなレッテルは、一種のジョークとしてエコシステム内にいる人々の結束を高めました。しかし同時に、自分自身がエコシステムの外に出ることを難しくしました。

「ひょっとして、自分にはPスクールよりも合う場所があるかも?」と考えがよぎっても、エコシステムに縛られているので、動けない。我慢して、Pスクールに通い続けるしかないのです。

闇を抱える名門校の見抜き方

要注意な名門校でよく聞かれる、頻出ワード

私がPスクールに入学したのは、いまから20年ほど前です。

ここに書いたような馬鹿馬鹿しいカルチャーはもう無くなっていてほしいと願うのですが、名門校は伝統を重んじているので、変化を期待できません。個人的には

  • ◯◯校の伝統を守る
  • ◯◯生としての誇り

のようなワードが学校ホームページに載っていたら、要注意だと考えます。この記事に書いてあるようなことが、今も起きていないか、よーく在校生にヒアリングしてから志望校を決めるのがよろしいかと思います。

要注意な名門校では、グローバル教育は不可能

「◯◯生としての誇り」という言葉は、◯◯生とそれ以外を明確に区別します。

◯◯生という枠を決めて、その中に子どもたちを押し込もうというのは、個性を真っ向から否定することです。このような環境で、どうやって多様性について教えるというのでしょうか?

いまはどこの名門校も、グローバル教育をアピールすることに必死です。でもそこで行われているのは、なんちゃってグローバル教育でしかありません。◯◯生の枠に押し込められた生徒を集団で海外に連れて行って、海外研修?しかも、2週間?

一体、何が学べるというのでしょうか。笑っちゃいます。

心理的安全性が確保されないから、メンタルを病む

厳格な入学基準のある名門校での生活は、一見、治安が保たれていてのびのびしているように見えます。しかし裏を返せば、生徒たちはいつでもその空間から排除される可能性があるという、不安とともに過ごすことになるのです。

少なくとも、私の中高6年間は、全くのびのびしていませんでした。いつも排除されることを恐れ、学校のブランドにしがみついていました。もしもPスクールに勘当されたら、他に拾ってくれる私立学校はありません。中学受験をしたことは地元の誰もがしっているのに、すごすごと公立校に入ることはできません。

入るのが難しい学校では、生徒の心理的安全性が確保されない、ということがよくお分かりいただけたかと思います。


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