コミュニケーション能力を幼児期に家庭で鍛える

世界標準のコミュ力

コミュニケーション能力ってどうやって育てたらいいの?

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世界標準のコミュニケーション能力とは?

日本標準のコミュニケーション能力

日本では、コミュニケーション能力が高い=空気を読むことができる人、ということになっています。その場で中心になる人の機嫌を損ねないようにうまく立ち回る人が評価されます。誰とでも仲良くできるとか、人当たりの良い人が人気です。

外向的な陽キャはコミュ力が高い、内向的な陰キャはコミュ力が低い・・・こんなイメージでしょうか。

しかし、これ全部誤解です。

世界標準のコミュニケーション能力

世界で要求されるコミュニケーション能力とは、次の3本柱です。

  • 自分の意見を伝える
  • 相手の意見を受け止める
  • 落としどころを見つけ、物事を前に進める

人によって言い回しは違いますが、あらゆる国のあらゆる教育関係者が言っていることを、総合するとこうです。

私は、日本でボーッと子育てしていたら、世界標準のコミュニケーション能力は育たないと思っています。なぜなら学校教育で教えてくれるのは、日本式のコミュニケーションだから。小学校の作文指導は、いまだにこんな調子です。

日本で「運動会はつまらなかった」とは書きにくい。「準備した人の気持ちをちゃんと考えて」などと怒られてしまったりするからだ

野本響子『日本人は「やめる練習」がたりてない』集英社新書

でも、絶望しなくても大丈夫。私は親の努力次第で、どこで育っても世界標準のコミュニケーション能力は身につけられると信じています。

この記事では、わが家でやっている取り組みの一部をご紹介しますね。

コミュニケーション能力の土台は自分の意見

幼児に「自分の意見」を言わせると、何を言うか

これは、今日の昼のこと。

5歳の息子は、保育園をお休み中。インフルエンザにかかってしまったのです。

具合の悪い息子のために、パパが特別なうどんを作ってくれました。冷たい麺に、出汁のきいたスープ。具材は細かく切ってあります。

ところが目の前にお椀が運ばれてくると、息子は開口一番こう言いました。

「こんなに食べたくない」

カチンときますよね。「んなこと言うヤツは食わんでよろしい!」とちゃぶ台ひっくり返したくなりますよね。でも、違うんです。

自分の意見が言えたら、まず褒める

これには親側の鍛錬が必要なのですが、まず褒めます。反射で褒めます。

「箸をつける前に、食べたくないと言えてえらい!!」

過去には、箸をつけてから「食べたくない」と言ったこともある息子。その時は、「あなたは風邪をひいているのだから、箸をつけちゃったら、残りのご飯は捨てるしかなくなる。それはとても勿体ないし、悲しいこと。だから次は、箸をつける前に教えてね」とやり取りをしました。

息子はその時のことを覚えていて、配膳された直後に「こんなに食べたくない」と言ったのです。なんという進歩でしょう。

オブラートに包む中身がないうちに、オブラートの包み方を教えても無駄

先ほど、世界標準のコミュニケーション能力はこの3本柱だと話しました。

  • 自分の意見を伝える
  • 相手の意見を受け止める
  • 落としどころを見つけ、物事を前に進める

まず本音を言えないことには、コミュニケーションのスタートラインに立てません。「本音をストレートに伝えたら、傷つく人がいるよ」とか「その言い方は相手に失礼だよ」とかの伝え方論は、次の段階で乗り越えるべき課題です。

オブラートに包む中身がないうちに、オブラートの包み方を教えても意味がないのです。

ですからわが家では、息子の言葉にカチンと頭にきても、まずは意見を表明したことを褒めてきました。そうしないと、本音が言えなくなります。

必要なら、相手が誰であっても言うべきことを伝える力がコミュニケーション能力

医者とお母さんの言うことが違う、と気づいた息子

先日、2歳の娘がアデノウイルスに感染しました。何日か経って元気になったので、登園許可証をもらいに、子ども2人を小児科に連れて行った日のことです。

医師は娘を診ると、「治っていますね。前回処方したお薬は、もう飲まなくて良いですよ」と言いました。息子は回転するイスをクルクル回して遊んでいました。

その晩のこと。娘はいつもどおり薬を飲みたがりました。甘いシロップは、娘の大好物です。

冷蔵庫には、ほんの数滴だけシロップが残っています。私は台所にいる夫に、「もう数滴しかないから、気休め程度に飲ませて、おしまいにしよう」と声をかけました。

夫がシロップを準備しているのを見て、息子が飛んできました。「待って。お医者さんは、お薬もう飲まなくて良いって言ってたよ」

「お母さんの言うことが絶対」だと、意見を言えない

「お母さんの言うことが絶対」という思考だと、この発言は出てきません。

「お医者さんは飲まなくて良いって言ってた気がするけど、気のせいかな?」

「お母さんのことだから、何か考えがあってのことだろう」

このように勝手に空気を読んで、意見を表明しなくなるのです。

実際の社会では、このように忖度した結果(とくに下っ端の人間が、権威ある人間に遠慮して、言うべきことを言わなかった結果)、医療事故や航空事故が発生し、数えきれないほど多くの人が亡くなっています👇この本には類似のエピソードがたくさんあり、身につまされます。面白いのでおすすめです

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意見を言わないことのほうを、注意する

わが家では、わがままでも何でも、まずは意見を表明することを重視してきました。

失礼なことを言うよりも、何も言わないことのほうが叱られるくらいです。

「沈黙は共犯(Silence Is Complicity)」という言葉を聞いたことがありませんか?「沈黙は共犯」とは、会話に参加しないことは、その行為に加担していることを意味します。AさんがBさんをぶん殴っている時、Cさんがそれを黙って見守るなら、CさんはAさんの暴力に加担しているのと同じだ、ということです。

自分の意見を臆せず言えるようになったら、伝え方を教える

伝え方を教えるのに適切な時期

このように発言を奨励して育てると、どうなるか。

せっかく遠方に遊びに連れて行ったのに、「疲れたから今日は楽しくなかったなー」とか言い出します。カチンときますが、それで良いんです。喜びましょう。

しかし、言いたい放題いうだけが、コミュニケーションではありません

「こいつズケズケ言いたいこと言うようになったな」と思ったら、適切な伝え方を学ぶのに良い時期です。

なぜ伝え方が重要なのか

せっかく遠方に遊びに連れて行ったのに、「疲れたから今日は楽しくなかったなー」と言われたら、普通はカチンときます。でも「じゃあもうどこにも連れて行かねえ!」とキレたら、この会話から得られるものはゼロ(というかマイナス)です。

コミュニケーションの目的は、異なる意見の落とし所を見つけて、物事を前に進めること

「疲れてしまって、楽しくない」と、感じるのは子どもの自由(自分の意見)。でも、そうストレートに言われるとカチンとくるのは親の自由(相手の意見)

じゃあ次のお出かけは、どうしたら家族全員ハッピーになれるかな?を建設的に話し合うのが、コミュニケーションです。(落としどころを見つけて、物事を前に進める)

建設的に話し合うためには、相手を感情的にさせずに、自分の意見を伝える必要があります。

自分の感情を認識することで、相手の感情に気がつける

冒頭の、うどん事件に戻ります。

息子の体調を慮って、手の込んだうどんを用意したパパ。配膳されるやいなや「食べたくない」と拒否した息子。

わが家では、普段こういうやり取りをします。(今回は相手がインフルなので省略してます)

息子くん、お絵描き好きじゃん?良いの描けたら、パパに見てもらいたいじゃん?わくわくしながら見せに行ったのにさ、「見たくない」ってピシャリと言われたらさ、、、どんな気持ちする?

子どもは3〜4歳くらいから、自分以外の人にも感情があるとわかります。他者の気持ちをゼロベースで想像するのは難しいことです。なので、こうした例え話で自分事に落とし込みます。そして気持ちが想像できたところで、

パパもさっき、そんな気持ちだったと思うよ

落としどころを見つけて、物事を前に進めるための伝え方

パパの悲しい気持ちがわかったところで、「反省しなさい」とは言いません。物事が前に進まないからです。食欲がなくて、渡されたうどんを食べられないのは事実です。無理やり食べてもしょうがないのです。

ここでようやく、伝え方が問題になります。小さい子には、例え話を使います。

もしお絵描きをすぐ見てくれなくてもさ、「パパは今、手が離せないの。だから、あとで見せてね」って言ってくれたらどうかな?

こんなやり取りを重ねて、適切な言い方を考えます。

じゃあ僕はパパに、「今はたくさん食べたくないの。元気になったら食べるね」って言ったらいいかな?と、

こうなるわけです。

「伝え方」は小学校で磨かれる

グローバル教育について書かれた本を読むと、こんな方法で子どもたちにコミュニケーションを教えているよ、と書かれています。

英国式や米国式には「スピーチ&ドラマ」などの授業があり、「伝え方」を小さい頃から徹底的に訓練するのです。 宿題も、「何かを表現してくる」ものが多いです。小学校の頃からポスターを作ったり、パワーポイントを使ってプレゼンテーションをしたりするのは当たり前。商品を渡されて、その商品のための「ラジオ広告を作る」課題や、Podcast を録音してくる課題、YouTube動画を作る課題もありました。

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英国式や米国式では、初等教育でこのようにバラエティに富んだ「伝え方」を学ぶのです。

そして中学・高校以降では、異なる意見同士でディスカッションをしたり、グループワークを進めたりと内容が高度になっていくのです。

こういう環境に、そもそも自分の意見が何にもない!自分の意見なんて言ったらボコボコにされてたから怖くて言えない!という子どもが突入して行って、一体何ができるでしょうか。何もできません。

というわけで、わが家では海よりも深い寛大な心で、子どもの失言を受け止めております。カチンとはきますが、何も言えない子になるよりは、私の奥歯が欠ける方がよっぽどマシです。何かの参考になれば、幸いです。